スペイン:教皇、カナリア諸島で、移民たちとの出会い
教皇レオ14世のスペイン訪問は終盤に入り、6月12日(木)午前、教皇はバルセロナからカナリア諸島へと空路で向かわれた。
諸島州は、7つの島から構成されるスペインの自治州で、州都としてラス・パルマス・デ・グラン・カナリアとサンタ・クルス・デ・テネリフェの2都市が指定されている。
教皇は12日、同諸島で3番目の規模を持つグラン・カナリア島を訪れた。そして、州都ラス・パルマス・デ・グラン・カナリアのアルギネギン港で、移民や移民支援の関係者との出会いを持たれた。
カナリア諸島は、アフリカ大陸北西沿岸から、最も近い地点で100kmから500kmの位置にある。同諸島はこうしたアフリカ大陸との近さから、ヨーロッパ大陸を目指す移民たちの最初の中継地点の一つとなっている。
教皇は、多くの移民たちの上陸の舞台となってきたアルギネギン港で、地元の行政代表、教会関係者、支援団体、そして出身国も様々な移民たち、およそ2000人とお会いになった。
この集いでは、地元司教の挨拶に続き、海上救援隊員、カリタスのボランティア会員、移民となり労苦の末に自立・起業した女性による証言が行われると共に、人身取引の被害にあった女性の手紙が読み上げられ、より良い未来のために祖国を離れざるを得なかった人々が置かれる状況が、様々な視点を通して語られた。
教皇は関係者への言葉で、「面積こそ小さくても、大きな人間性にあふれたこの島は、祖国を離れた無数の人々がやって来るのを見てきた。その中には、海上で救助された人たちもいれば、亡くなって引き上げられた人たちもいた」と述べ、「教会は、このような海からも、また飢えや、渇き、暴力、恐怖、追われることによって、人間の尊厳が傷つけられているいかなる場所からも、目を逸らすことはできない」と話された。
聖書的において、海はしばしば脅威や、暗闇、混沌の象徴として表現される、と教皇は述べつつ、「今日でも、これらの海には、人々の絶望につけ込むマフィアや、女性や子どもを奴隷化する人身取引、貧しい人たちが搾取と忘却の淵に飲み込まれるままにしている多くの人々の無関心、といった怪物がひそんでいる」と、移民を取り巻く状況を見つめられた。
教皇は、この集いで代表の人々が語った体験は、いのちを救うことの意味や、カリタスや小教区の日頃の活動の存在を思い出させてくれる、と感謝を表された。
特にカリタスのボランティアの女性が語ったように、移民が「大勢の中の一人」や、「カテゴリーや数字」ではなくなった時に「眼差しの回心」が始まる、と教皇は話された。
また、人身取引の被害者の女性の手紙に触れた教皇は、「親愛なるブレッシングさん、たとえ今日ここにおいででなくても、あなたの声は確かに届きました」と呼びかけられた。
「ブレッシング」というこの女性の名前が「祝福」を意味することに教皇は言及しながら、「すべての人間のいのちは神からの祝福であり、誰もそれを売り買いしたり、使い捨てることはできない。すべての人の中に創造主の姿と、その似姿が輝いているからである」と述べられた。
教皇は、人身売買や搾取の被害にあった多くの女性たちのために、「たとえ他者があなたの体に値段をつけたとしても、神はあなたを計り知れない価値を持つ存在として見守り続けておられます。あなたのいのちは、あなたを傷つけた者のものではありません。あなたのいのちは神に属し、誰も奪うことのできない尊厳を保っています」とメッセージをおくられた。
レオ14世は、この日集った大勢の移民たちの尊厳に敬意を表し、「皆さんは数字でも、ファイルでもありません。皆さんには残した家族と故郷があり、誰もさげすむ権利のない夢を持っています」と語りかけた。
しかし、教皇は、「同時に、皆さんのいのちは守られるべきということもお伝えしたいのです。皆さんのいのちを売りさばこうとする者にそれを引き渡してはなりません。皆さんの体、お金、沈黙、あるいは自由と引き換えに、安易な楽園を約束する者たちを信じてはいけません。そうした偽りの約束は『セイレーンの歌』であり、死の産業なのです」と話された。
「移民たちの悲劇は良心の糾明をもたらすべき」と述べた教皇は、移民の出身国にとっては平和、正義、発展の条件を整える必要を、通過国にとっては弱い立場の人々を犯罪網から守る必要を、ヨーロッパにとっては地中海と大西洋が石板のない墓地になることに慣れないための努力の必要を、国際社会には効果的かつ粘り強い協力の必要を訴えられた。
「到着者の管理、人数の配分、国境の強化、あるいは既に亡くなった人たちの死を嘆くだけでは十分ではない」と述べた教皇は、「到着する船はすべて、移民だけでなく、一つの問いを運んでくる。それは『もしわたしたちの兄弟姉妹の多くがいのちの危険を冒してまで生きる道を求めなければならないとしたら、わたしたちは一体どんな世界を築いてきたのだろうか』という問いである」と指摘。
人間の尊厳を守るために必要なものとして、教皇は、安全で合法的な方法、救済と支援、人身取引に対抗するための具体的な協力、被害者の効果的な保護、受け入れと統合の実際的なプロセス、そしてすべての人が自国で尊厳をもって暮らすための政策の必要を挙げられた。
「生命の危険にさらされた時に避難する権利が存在するならば、移住を強いられない権利も存在する」とレオ14世は強調。
人には、飢え、戦争、迫害、暴力、環境破壊、政治・社会的腐敗、武器による子どもたちの未来の破壊なしに、自分の家に留まる権利がある、と話された。
「死者を数えることに慣れてはならない。人間の尊厳に国籍はなく、国境を越えてもその価値は失われない」と述べた教皇は、「今日、この海岸にやってくるすべてのいのちは、わたしたちの人間性に残るものは何かを問いかけている」と語られた。
